絵本作家になるには? 絵本の出版方法と絵本作家に必要なこと

絵本作家になるには?絵本の出版方法と絵本作家に必要なこと

こんにちは! 絵本作家・画家のみみつぐみです。

私は、2019年に「メルルとようかいのおしゃれやさん」という絵本を商業出版しています。

今回は、「絵本作家になるにはどうすればいいの?」というテーマで書いていこうと思います。

絵本作家になるための道:2つの出版パターン

絵本作家になるためにはどういう道があるのか、みなさんはご存知でしょうか。

ここでは、アナログ絵本を出版することを前提としてお話ししていきたいと思います。

まず、出版の形式として、「自費出版」と「商業出版」という形がありますので、それについてご説明していきますね。

絵本の自費出版とは?

自費出版は、著者(作家)が自分の作品を出版する際に、出版社を通さずに費用を自分で負担する形式の出版方法です。

この方法では、著者が作品の内容やデザイン、販売方法などを自由に決定できますが、一方で出版社が提供する編集、製本、販売、流通などのサービスは利用できません。

以下に自費出版の特徴と注意点をまとめてみました。

  1. 制作の自由度: 著者は作品の内容や表紙、デザインなどを完全に自由に決めることができます。自分のビジョンをそのまま反映させることが可能です。
  2. 費用負担: 出版にかかる費用(編集、デザイン、印刷、配送など)は著者が負担します。これにより、出版社との契約や交渉が不要で、比較的簡単に出版できる利点があります。
  3. 販売方法: 自費出版の作品は、著者が選んだ方法で販売できます。オンラインストアや個人のウェブサイト、イベント、友人・家族への手売りなど、幅広い方法があります。
  4. 収益: 売上から得られる利益は著者に入りますが、費用の回収には時間がかかることがあります。また、自費出版の場合、販売にかかる手数料やコストを考慮する必要があります。
  5. プロモーション: 自費出版作品は、知名度が低いため、著者自身で積極的なプロモーションが必要です。SNSやブログ、イベントなどを活用して作品を宣伝することが重要です。

自費出版は、作品を実現する手段としては有用ですが、一方で注意が必要です。自分で費用を負担するので、売上が伸びない場合には投じた資金が回収できないことがあります。

また、出版社に比べて流通力や広告力が限定的なため、作品が広まるためには著者自身の努力が求められます。そのため、自費出版を検討する際には、事前によく調査し、リアルな目標とプランを持つことが大切かと思われます。

ここ最近では、「出版したい著者に自費出版を持ちかけるビジネス」をしている出版社も出てきているので、例えそれが大手の出版社だとしても「自分の絵本を出版できる」という売り文句に踊らされずに冷静に検討する必要があります……!
(自費出版を出版社を通して行えば、その分の手数料が発生するので、その分投資額が増えるということを理解しておく必要があリます)

絵本の商業出版とは

商業出版は、出版社を介して著者の作品が市場に出される形式の出版方法です。

出版社は編集、製本、販売などのプロセスを提供し、著者はその代わりに出版社と契約を結び、作品を出版・販売する際に利益を分け合います。

商業出版にはいくつかの特徴があります。

  1. 専門知識とサポート: 出版社は編集者やデザイナー、マーケティング担当者などのプロフェッショナルを揃えており、作品のクオリティ向上や市場への適切なアプローチをサポートしてくれます。しかし小規模の出版社では、編集者がデザイナーやマーケターを兼任している場合がほとんどです。
  2. 経験豊富な編集: 出版社の編集者は作品を評価し、必要ならば修正や改善案を提案してくれます。これにより、読者にとって魅力的な作品として仕上げる手助けをしてくれます。
  3. 流通と販売: 出版社は書店やオンラインストアなどへの作品の流通を担当します(取次との間に入ってくれる)。これにより、作品が幅広い読者に届けられる機会が増えます。
  4. 費用: 商業出版では、出版社が製本、印刷、流通などにかかる多くの費用を負担します。著者にとっては初期の投資が少なくて済む点がメリットです。
  5. 信頼性と認知度: 商業出版は、出版社から作品が発売されるため、一定の信頼性と認知度があります。これにより、読者にとって作品の品質や内容の信頼が高まります。

ただし、商業出版にも注意が必要です。出版社は市場で競争しており、全ての著者と契約できるわけではありません。また、出版プロセスには時間がかかることもあります(企画を通すのに半年かかる……といった話を編集者から聞いたことがあります)。自分にとって適切な出版社を見つけることや、出版契約の詳細を理解することが重要です。

商業出版は、作品を広く知ってもらいたい著者や、専門的なサポートを受けたい著者にとっては魅力的な方法ですね!

絵本を商業出版するにはどうしたら良いの?

これまでお話ししてきたように、自費出版なら自分で好きなように絵本の形にし、ECサイトで販売したり手売りすれば良いのですが、商業出版となるとそうはいかない……ということがわかりましたね。

なぜなら、商業出版には出版社をはじめとして、取次や書店など、販売するためにたくさんの人が関係してくるからです。要するに、ほぼ一人でできる自費出版とは違って、商業出版には多くの人が“仕事として”関わってくるということ。

出版もビジネスですから、「売れない本=利益のでない本」をそう簡単に出版する、という判断にはならないわけです。

とはいえ、絵本作家としては、全国の書店に自分の絵本が並ぶ光景を目にするのは夢ですよね。(私もそうでした!)

以下に商業出版につながる道として考えられる方法、そして私がチャレンジしてみた方法を挙げてみました。

商業出版につながる5つの道
  1. 様々な団体が主催する絵本のコンペ・公募・コンクールに応募する。
  2. イラストレーターとして活動するうちに、挿絵画家として出版社から声がかかる。
  3. 「なろう系」のサイトで作品を発表し続けるうちに人気が出て出版の機会を得る。
  4. 出版社に持ち込みする。
  5. たまたま飲みの席で隣に座った人が絵本の出版社の敏腕編集者で、意気投合して出版が決まる。

いかがでしょうか?(もっと他に方法があれば、逆に教えてほしいです!)

私が「こうだったらいいな」と思うルートは、実は⑤だったのですが、いかんせん出版当時は産後のママだったので外に飲みに行く機会が皆無。ゆえにこのルートは自動的に却下されました。

②については、自分でお話も書きたかったし、(結果的にイラストの仕事をしたとしても)イラストレーターとしてのキャリアを積みたいわけではなかったので却下。しかしながら、イラストレーターをしながら絵本作家もしているという方がほとんどなのではないかと思われます。

③については、一応私もなろう系サイトに絵本を一つ登録しているのですが、ネットで絵本を読むのって限られた大人しかいないよなぁ……しかも見辛いし……と感じて、そこにエネルギーを注ぐのはやめました。

④については、1社か2社、出版社に持ち込みしました。持ち込みを受け付けている出版社のWEBサイトをチェックして、郵送なりメールなりで作品集を送るのですが、直接会ってはもらえませんでした。(返信もなし……涙)
なので、デビューしてから持ち込みする方が会って作品を見てもらえる可能性が高くなるのでは? と考え、この時点ではやめることにしました。

そして、王道パターンの①様々な団体が主催する絵本のコンペ・公募・コンクールに応募する。が残るのですが、結果的に私が商業出版できたのは、このパターンでした!

ちなみに、「商業出版できるのかと思って応募したら、自費出版の権利を獲得するためのコンペだった…」というようなコンペもあるそうなので、商業出版したいのならコンペの募集要項を読み、評判もチェックし、よくよく吟味する必要があります。

私が絵本作家になった方法

ここまで記載したような商業出版を目指しいくつかのルートを試してみたうえで、私が絵本作家としてデビューするきっかけとなったエピソードを、これからお話ししたいと思います。

私は半年間、東京・四谷にある絵本の学校に通っていたのですが、その学校のつてで第0回に相当するクローズドコンペを開催するとのお知らせが舞い込んできたのです。
クローズドということは、限られた人にだけ知らされた募集。
私は、こう思いました。「このチャンスを絶対につかみ取りたい…!」

ちょうどその頃、絵本にしたいお話のイメージがありました。一つは「出身地である岩手県遠野市に伝わる『遠野物語』のエッセンスをお話の中に入れたい」ということ、もう一つは「大人になった今でも私の中にいる、幼い自分を描きたい」ということでした。

主人公は女の子、3歳くらいから理解できる内容で、舞台は地元・遠野にある神社で、妖怪を登場させて、女の子はおしゃれが好きな子で……

そんな風にイメージを膨らませていき、お話しを作りました。

絵に関しては、普段私が絵画作品を制作する時のような、厚塗りでしっかりした画面にすると締切に間に合わないと思ったので、自分としてはラフに近い、軽いタッチの絵で制作しました。
それでも制作期間としては、ゼロから設定・ストーリー・絵づくりをして、半年くらいかかってしまいました……(汗)

そうして、なんとか完成した絵本「メルルとようかいのおしゃれやさん」は、コンペでなんと大賞をいただき、出版できる運びとなりました

こちらが完成した絵本「メルルとようかいのおしゃれやさん」です!

(絵本にサインを入れている私。)

出版が決まってからも色々やることがあって、帯(絵本に巻いてある長方形の紙のこと)に記載するキャッチコピーを担当編集者さんと考えたり、表紙の印刷の仕様を一緒に決めたり。かわいいタイトルロゴは担当編集者さんが作ってくださいました!

絵本作家になるために必要なもの

……と、ここまで絵本作家になるには何をしたら良いのか、商業出版するにはどうしたら良いのか、ということについて書いてきましたが、
「商業出版していなくても、絵本を作っていれば絵本作家と名乗ってもいい!」
と、私は思っています。

なぜなら、「絵本を作る人=絵本作家」という解釈だからです!!(単純!)

出版社を通すメリットは「ある程度クオリティが担保される」というところかなと思います。

また、出版社を通すと書店に置いてもらえるのでそういった経験をしたい場合には良いと思います。

しかし、書店に置いてもらったからといって売れるわけではないのが現実です……!

今の時代、編集者さんもSNSなどすでにフォロワー数が多かったり、ファンがついている作家を探して、出版のオファーをかけているといいます。

ビジネスなので、「売れる」という算段がつかないと社内の会議にも通しにくいという訳なのですね。

なので、これからは商業出版するにしろ、自費出版するにしろ、「ファン」の存在が不可欠だということ。

収入に関して言えば、絵本を商業出版した場合、印税は3%〜10%。つまり1000円の絵本が売れても作家の懐に入ってくるお金は最大で100円というわけです。重版してたくさん部数を出していかなければなかなか厳しい金額ですよね。

自分でファンに売っていける人なら自費出版だとしても、印刷代等の制作費さえ出してしまえば、あとは利益になります。

絵本を制作することと同時に、戦略的にファンを獲得していくことが、「絵本作家になるには?」の解として、これからの時代の作家に必要なことなのだと感じています。

まとめ

絵本作家になるためには、多くの方法がありますが、商業出版を目指す場合は出版社との連携やファンの獲得が重要です。

しかしながら、自費出版でも、ファンがいれば十分に絵本作家としての活動ができると思います!

なので、絵本作家は絵本制作をすると同時に、ファンを作る活動もしていく必要がある……ということですね!

ではまた☆

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